試合に向けた心理的・精神的コンディショニング

不安や緊張、興奮のレベルが普段以上に高くなりすぎても低くなりすぎても、試合や競技会当日のパフォーマンスに悪影響を及ぼします。

不安や緊張、興奮のレベルが高くなりすぎると、カーッとして力みや焦りが生じる、落ち着きがなくなる、集中力が低下するなどにつながります。反対に、興奮のレベルが低くなりすぎると、ボーッとして注意散漫になり、集中力が低下します。

試合や競技会で実力を発揮するためには、緊張とリラックスのバランスを保ち、自分の競技や個性に合った心理的・精神的状態にもっていくことが必要です。

試合や競技会の準備期間

①不安を書き出し、可視化する

過度に緊張を感じると、人はネガティブ感情になる傾向があります。不安は、対象がわからない漠然とした感情であり、ネガティブ感情のなかでも代表的なものです。一方で、対象が具体的となったネガティブ感情は「恐れ・恐怖」と言われます。恐れや恐怖感の場合は具体的な対処が可能です。

試合や競技会の準備期間には、不安の対象を具体的に書き出すことによって可視化し、不安を恐怖感という対処可能なものに変えていきます。そして、それぞれの恐怖感についての対処方法を考えていきましょう。


②ネガティブ思考をポジティブ思考に変換する

「うまく力が発揮できなかったらどうしよう」や「対戦相手が優勝候補に決まり、負けてしまう可能性が高い」などのネガティブ思考を、

「これまで努力を続けてきたからこそ、大きく成長できて、今、ここにいる。この機会を通じて、もっと大きく成長してやる!」や「ちょうど良い、そこに勝利すれば、優勝に近づくぞ。」

と、成長した自分や勝利した自分をイメージしながら、ネガティブ思考をポジティブ思考に変換することも効果的です。


③イメージトレーニング

イメージとは、心の中に思い浮かべる像、心象、形象、姿、映像のことです。イメージトレーニングは、実際の運動や行動を行わないで、心の中でイメージやビジュアライゼーションを通じてトレーニングを行う方法です。スポーツや芸術、パフォーマンス、またはその他の活動において、技術やスキルの向上、自己コントロールの向上、ストレスの軽減などの目的で用いられます。

イメージトレーニングの手順

  1. イメージストーリーの作成
    ⾃分のおかれている場⾯・状況(オリンピック・パラリンピック本番、選⼿選考会など)、⼼⾝の状態、周囲の様⼦(観客の有無、天候など)など、思いつく限り細かく設定しましょう。
    全体の流れができたら、ある特定の状況に対して求められる身体感覚や心理状態などをより具体的にイメージする「チェックポイント」を付け加えていきましょう。
    例えば、後半ラストスパートに向けたピッチの切り替えに対して「ギアチェンジ」といったキーワードを⽤いることで、そこで求められる⾝体感覚や⼼理状態を⾃分なりに表現してみましょう。
      
  2. リラクゼーション
    目を閉じて、エクササイズ動画で紹介している呼吸法を行いましょう。
    例:チャイルドポーズ横隔膜呼吸
      
  3. イメージ想起
    ⼼⾝の⼗分なリラックス感が得られたら、作成したイメージストーリーに従って、目を閉じてイメージをしてみましょう。自分が動いているイメージ(内的イメージ)や外から自分を観察しているイメージ(外的イメージ)などイメージの種類は多岐にわたります。
    イメージをする時は更にリアルにイメージし、視覚だけでなく聴覚、触覚、味覚、嗅覚、身体感覚、心理的状態などを現実に近い状態で想像することが必要です。また、自分の意図した通りにイメージをコントロールすることも大事です。
    イメージの消去や再生、スロー、繰り返しなど意図してコントロールしてみましょう。
      
  4. 消去動作
    目を閉じたまま、腕を曲げ伸ばしたり、背伸びをしたりして、身体のだるい感じを取ります。
      
  5. 開眼
    身体のだるい感じが取れたら、目を開けます。
      
  6. イメージ体験の振り返り
    イメージ終了後は、イメージ中の体験を練習日誌などに記録しましょう。
    例えば、イメージ中に動きにくい動作があったか、気持ちの高まりはあったか、その場にいるような感覚になったかなどに注⽬してみましょう。
    イメージ体験を記載することで、イメージの特徴や課題、気づいたことを確認できます。

別のワードで記事を検索する