骨盤底筋群と女性アスリートの健康課題について
2-2.世界のアスリートの尿もれ事情

世界のアスリートの尿もれ事情は、どのようになっているのでしょうか？

近年、世界中でアスリートの尿もれに関する研究が増えてきており、少しずつですが実態が分かり始めています。いくつかの研究の結果を紹介します。

まず、体に対するインパクトが大きいほど尿もれしやすいと考えられています。

中でもトランポリンの選手は、80％が尿もれを経験し⁽¹⁾、バレーボール選手75.6％⁽²⁾、バスケットボール選手66％、体操選手57％、テニス選手50％、フィールドホッキー選手42％、陸上選手29％が尿もれの経験をしているというデータがあります。他にも、出産を経験したことのないエリートアスリートの3分の2が頻繁に尿もれに悩んでいると回答しています⁽³⁾。

また、体操選手とチアリーダー319人を対象にした骨盤底筋障害の研究では、尿もれは67％、肛門失禁は84％が経験していると回答しています。
チアリーダーは、スポーツをしない女性の2.3倍の率で便失禁になったことがあるとのデータもあります⁽⁴⁾。

また、腹圧性尿もれを経験しているハイレベル新体操アスリートの

70.6％がスポーツパフォーマンスに悪影響が出たと感じている⁽⁵⁾
28％の女性がパッドを使用している⁽⁴⁾
22％が尿もれの不安のために、トレーニングや特定のエクササイズを回避⁽⁶⁾
29.4% が尿もれが見えないかどうか不安になっている⁽⁵⁾
14.7%がまた起こってしまうのではないかと不安になっている⁽⁵⁾

と答えています。

他にも、研究に参加した選手の69.1%は骨盤底筋障害について聞いたことがない⁽⁵⁾と高い割合で名称を知らないというデータが出ています。

別の研究結果⁽³⁾では、
47％の女性アスリートが高校生の時に、17％が中学生の時に尿もれを経験していると回答しています。

そして、95％以上の尿もれ経験者が

恥ずかしい
それが正常な状態だと思っていた

という理由で専門家のアドバイスを求めていませんでした⁽⁷⁾。

引用文献

de Mattos Lourenco, T. R., Matsuoka, P. K., Baracat, E. C., & Haddad, J. M. (2018). Urinary incontinence in female athletes: a systematic review. International urogynecology journal, 29(12), 1757–1763. https://doi.org/10.1007/s00192-018-3629-z
Pires, T., Pires, P., Moreira, H., & Viana, R. (2020). Prevalence of Urinary Incontinence in High-Impact Sport Athletes: A Systematic Review and Meta-Analysis. Journal of human kinetics, 73, 279–288. https://doi.org/10.2478/hukin-2020-0008
Nygaard, I. E., Thompson, F. L., Svengalis, S. L., & Albright, J. P. (1994). Urinary incontinence in elite nulliparous athletes. Obstetrics and gynecology, 84(2), 183–187.
Carvalho, C., da Silva Serrão, P. R. M., Beleza, A. C. S., & Driusso, P. (2020). Pelvic floor dysfunctions in female cheerleaders: a cross-sectional study. International urogynecology journal, 31(5), 999–1006. https://doi.org/10.1007/s00192-019-04074-w
Gram, M. C. D., & Bø, K. (2020). High level rhythmic gymnasts and urinary incontinence: Prevalence, risk factors, and influence on performance. Scandinavian journal of medicine & science in sports, 30(1), 159–165. https://doi.org/10.1111/sms.13548
Nygaard, I. E., & Shaw, J. M. (2016). Physical activity and the pelvic floor. American journal of obstetrics and gynecology, 214(2), 164–171. https://doi.org/10.1016/j.ajog.2015.08.067
Jácome, C., Oliveira, D., Marques, A., & Sá-Couto, P. (2011). Prevalence and impact of urinary incontinence among female athletes. International journal of gynaecology and obstetrics: the official organ of the International Federation of Gynaecology and Obstetrics, 114(1), 60–63. https://doi.org/10.1016/j.ijgo.2011.02.004