骨盤底筋群に関与する8つの要素
4-1.骨盤底筋群

骨盤底筋群の機能に影響を与える一つ目の要素は、骨盤底筋群そのものです。

「骨盤底筋群をうまく使えていますか?」

という問いに対して、「よくわからない」と答える人が多くてもおかしくないと思います。
上腕二頭筋(肘を曲げて拳を握りしめた時にできる「力こぶ」にあたる肩から肘を繋ぐ筋肉)のように自分の目で確認できる大きな筋肉と違って、骨盤底筋群は、自分の目では確認できない場所にある、とても小さな筋肉の集まりです。

うまく使う」とは
①使いたい筋肉を、使いたい時に使うことができる状態
②筋肉自体が必要な分だけ伸縮できるような状態
であることを意味します。次に①と②の状態を詳しく説明していきます。

①使いたい筋肉を、使いたい時に使うことができる

下の図のように、骨盤底筋群は小さな筋肉の集まりです。その小さな筋肉ひとつひとつの収縮をそれぞれコントロールするまでには至らなくても、目的とする機能を持つ筋肉の集まりをコントロールできるようになる必要があります。

骨盤底筋群のイラスト:前と後ろの三角形筋肉群

骨盤底筋群のイラストにある、尿道と膣を締める骨盤底筋群(前部の尿生殖三角)と、お尻の穴を収縮する骨盤底筋群(後部の肛門三角)は、それぞれ別の役割を持っています。

例えば尿もれに悩んでいる場合、骨盤底筋群がしっかりと収縮できず、尿道を必要な時に必要なだけの力で締めることができていないと考えられます。従来の骨盤底筋群のトレーニングでは、「尿道・膣・お尻の穴」を全て一緒に締めるトレーニングが主に紹介されています。しかし、尿もれを改善するためには、骨盤底筋群全てを収縮するのではなく、尿道を締める役割を持つ「骨盤底筋群の前の部分(前部の尿生殖三角)」を重点的にトレーニングしていく必要性があると考えられます。

②筋肉自体が必要な分だけ伸縮できるような状態

トピック3−2.骨盤底筋群のトレーニングについての記事で紹介したように、現在の骨盤底筋群のトレーニングとして一般的に紹介されているのは、あくまで「骨盤底筋群がゆるい」ことが前提となっています。

筋肉には通常の動作や姿勢を維持するために一定の緊張がかかっています。しかし、過度なストレスが加わることや、同じ姿勢を長時間保持することなどにより、筋肉が過緊張することがあります。

この過度な緊張が長期間続くと筋肉が疲労したり、痛みが生じたり、筋肉が硬くなったりします。加えて必要な筋肉の伸縮が制限され、それによって動きや機能の制限を引き起こすことに繋がってしまいます。このようなことは、骨盤底筋群にも起こります。

骨盤底筋群が硬くなっていること、および過度に緊張していることに気づかないまま、一般的に紹介されている「締める」こと「収縮する」ことに重点を置いた骨盤底筋群のトレーニングをしていたとしましょう。

骨盤底筋群が硬くなっていたり、過度に緊張していることで、伸縮に制限がかかり、動きや機能が制限されている場合があるため、トレーニングをした時間や努力が無駄になってしまうだけではなく、症状が悪化することがあります。また、トレーニングの効果が思うように出ないため、「骨盤底筋群のトレーニングは役に立たない」と思い込んでトレーニング自体を止めてしまい、改善できるものも改善できなくなってしまう可能性があります。

まずは、しっかりとご自身の骨盤底筋群の状態を確認して、自分にあうアプローチの方法を知ることから始める必要があります。

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