尿もれへのアプローチ 6.
パッドや手術だけが対策・治療法ではない!

骨盤底筋群の機能はたくさんの要素が絡み合って影響されています。

ここまでの骨盤底筋群に関する説明を通して、「尿もれをしたら、まずは骨盤底筋群の機能が低下する原因を調べ、筋肉と機能のバランスを整えるエクササイズを行う」という一連の流れが重要であるとお分かりいただけたと思います。

尿もれの対策としてパッドを使用したり、手術をするという治療法もあります。しかし、パッドはあくまで尿もれの一時的な対処療法であって、尿もれを根本的に改善したり予防したりするものではありません。


腹圧性尿失禁根治術、Tension-free Vaginal Tape (TVT) 手術の成功率は、20年に及ぶフォローアップの結果によると、客観的治癒率(ストレステストにおいて尿もれが起こらない)が 91.7%、自覚的治癒率(手術による尿もれの改善に対する満足度について、”大変改善された””改善された”と評価した患者数)88.8%と優れた成績が報告されています(1)。しかし、手術をすることで新たな失禁、恥骨後痛および血腫などが起こる可能性もあり、一般的かつもっとも深刻な合併症の1つである慢性痛が起こることもあります。これは、神経の損傷や、手術で使用したメッシュが骨盤底筋群だけではなく骨盤底筋群の周りにある膀胱、尿道、直腸、小腸、大腸などにも影響を及ぼしてしまった、またはもっとも一般的には膣などの臓器や皮膚への過剰な瘢痕組織(手術の跡や傷を治す過程で生まれる組織、通常の組織よりも硬めで縮みやすく、伸びにくくなっている組織)によって引き起こされ、神経を引っ張って痛みを引き起こす可能性があります。

手術を選択する前に、尿もれの原因が何かを検討し、骨盤底筋群の機能に影響を与える要因を一つ一つ整えることが重要です。
骨盤底筋群の機能に影響を与える原因を取り除いた後、それでも尿もれが改善しない場合は、専門医とじっくり話をして手術を検討しましょう。そうすることで体にかかる負担を減らすことができます。

体は複雑な仕組みでできており、まだ解明されていないことも多く、その中でも骨盤底筋群の研究は発展途中の分野です。
現時点では8つの要素が骨盤底筋群の機能に影響することを紹介していますが、これから更なる”ヒミツ”がわかってきてもおかしくはありません。

解明されていない状態でも出来ることとして、まずは骨盤底筋群の機能不全の有無に関わらず、自分の身体を知り、姿勢や呼吸を普段の生活から意識していきましょう。また、自分の身体に合ったエクササイズをしてみましょう。自分特有の体の使い方を学ぶことで、心身を最高状態に持っていくことができます。

参考文献

  1. Braga A, Caccia G, Papadia A, et al. The subjective and objective very long-term outcomes of TVT in the COVID era: A 20-year follow-up. Int Urogynecol J. 2022;33(4):947-953. doi:10.1007/s00192-022-05094-9


⇨トピック5.「骨盤底筋群のセルフチェック」に戻る
骨盤底筋群のトップページへ戻る

別のワードで記事を検索する