骨盤底筋群のセルフチェック5.自分の骨盤底筋の状態を知ろう!
A:骨盤底筋のテスト

現在のところ、8項目が骨盤底筋群の機能に影響を与えることがわかっています。
「尿もれ=骨盤底筋を鍛える必要がある」というよりも、
まずは、「なぜ骨盤底筋群がうまく機能していないのか?」を知りましょう!

トレーニングを行う時は、骨盤底筋群の機能不全を引き起こしている原因を取り除くことに焦点を当てましょう。これが、骨盤底筋群の機能を改善するための鍵となります。

このトピックでは、比較的行いやすい骨盤底筋群と呼吸のテストを紹介していきます。
大きく分けて2つのセルフテスト(A:骨盤底筋、B:呼吸)をして、自分の体の状況を認識した上で、ご自身に合った対策法を見つけていきましょう。

この記事では骨盤底筋のテストと改善エクササイズについてご紹介します。

目次

A:骨盤底筋のテスト

理想の状態:骨盤底筋全体が必要な時に必要な分の伸縮が行われる状態です。骨盤底筋群の状態を把握する方法はいくつもあります。今回は、手軽に日頃から自分でチェックできる方法をご紹介します。

<評価方法>


テスト①
骨盤底筋群が硬くなったり緩くなったりしていないか

ステップ1:
横になり、膝を曲げて丸まります。

ステップ2:
坐骨のやや内側に指を引っ掛けるようにして、左右の骨盤底筋の前部・後部を人差し指と薬指で軽く押してみます。

左側の前部・後部の骨盤底筋群をチェックする場合

右側の前部・後部の骨盤底筋群をチェックする場合

ステップ3:
手で骨盤底筋を軽く押した時に、「痛気持ちよさ(軽い痛みとともに気持ちよさがある状態)」があるかどうか、またどの部分(右前・左前・右後ろ・左後ろ)に痛気持ちよさがあるかをチェックします。

  • A:痛気持ちよさがある(右前・左前・右後ろ・左後ろ)
  • B:痛気持ちよさがない(右前・左前・右後ろ・左後ろ)
  • C:よくわからない(右前・左前・右後ろ・左後ろ)

テスト②
骨盤底筋群を使いたいように使うことができる?

ステップ1:
両足をしっかり床につけ、両方の坐骨が椅子の座面に接し、骨盤の三角形が床に対して垂直になるように椅子に浅めに座ります。

ステップ2:
後ろの方の骨盤底筋群(お尻の穴あたり)を片手で軽く覆います。
このときに、下の右図の右後ろと左後ろにある骨盤底筋群に人差し指と薬指があたるように覆います。

ステップ3:
お尻の穴を締めて頭の方に向かって持ち上げます。

この時に、どんな感覚があるかを下のA、Bの質問に沿って答えてみてください。

A:触っている部分がふわっと上に持ち上がる感覚はいかがでしょうか?
・ある
・ない
・持ち上げようと思っているけど持ち上がらない、よくわからない

B:その持ち上がる感覚がわかる場合、右側、左側に違いがありますか?
・右側の方が感覚が強い
・左側の方が感覚が強い
・両方同じくらい、よくわからない


ステップ4:
ステップ3と同じ要領で、前側の骨盤底筋群を片手で軽く覆います。この時に、下の図の右前と左前にある骨盤底筋群に人差し指と薬指があたるように覆います。

ステップ5:
尿道・膣を締めて頭の方に向かって持ち上げます。

この時に、どんな感覚があるかを下のA、Bの質問に沿って答えてみてください。

A: 触っている部分がふわっと上に持ち上がる感覚はいかがでしょうか?
・ある
・ない
・持ち上げようと思っているけど持ち上がらない、よくわからない

B:その持ち上がる感覚がわかる場合、右側、左側に違いがありますか?
・右側の方が感覚が強い
・左側の方が感覚が強い
・両方同じくらい、よくわからない


*もし座位で感覚が掴みにくい場合は、
テスト①の横向きポジションで試してみください。

<A:骨盤底筋のテスト解説>

テストの結果を確認してみましょう。

テスト結果テスト①の結果テスト②の結果
理想的な骨盤底筋群の状態痛気持ちよさがないある
パターンA:
骨盤底筋群の場所・使い方がわからないタイプ
よくわからないよくわからない
パターンB:
骨盤底筋群が過緊張しているタイプ
あるない
パターンC:
骨盤底筋群が緩みすぎているタイプ
ないない

理想的な骨盤底筋群は以下の状態です。

テスト①
骨盤底筋群が硬くなったり緩くなったりしていないか?の場合
→ 骨盤底筋群を指で軽く押した時に「痛気持ちよさがない」

テスト②
骨盤底筋群を使いたいように使うことができる?の場合
→ 骨盤底筋群全体が、前後左右均等にふわっと上に持ち上がる感覚が「ある」


骨盤底筋群が機能しない大きな3つのパターン

一方で、小さな筋肉の集まりである骨盤底筋群を大きく4つ(右前・左前・右後ろ・左後ろ)の部位に分けた場合、それぞれの部位によって、骨盤底筋がうまく機能しないパターンが異なる可能性もあります。

次からは、それぞれのパターンについて詳しく説明します。

パターンA:骨盤底筋群の場所・使い方がわからないタイプ
パターンB:骨盤底筋群が過緊張しているタイプ
パターンC:骨盤底筋群が緩みすぎているタイプ

パターンA:
骨盤底筋群の場所・使い方がわからないタイプ

テスト①の痛気もち良さの確認でも、テスト②の筋肉を使う感覚でも「よくわからない」と答えた方がこのタイプです。どこに骨盤底筋があって、その骨盤底筋がどのような状態なのか、どのように使うのかがわからない可能性が高いです。

このタイプの方は、骨盤底筋群の位置を把握することと伸縮力の改善の必要性があります。

<改善エクササイズ>

テスト②骨盤底筋を使いたいように使うことができる?を使用して、骨盤底筋群(前部と後部)を上に持ち上げる感覚を習得しましょう。このテスト兼エクササイズを行うことで骨盤底筋群の位置を知覚し、骨盤底筋の伸縮能力とその感覚を身につけていきましょう。 

もし感覚がわかりにくい部分が「右前部」であれば、腰を軽くそらし骨盤を前傾しましょう。その後、骨盤底筋群の特に右前部に手を添えながら骨盤底筋群を軽く締めて、頭に向かって引き上げましょう。次に、骨盤底筋群を緩めるという順番でエクササイズをすると、前部への感覚がさらに掴みやすくなります。

もし感覚がわかりにくい部分が「右後部」であれば、背中を丸めて、骨盤を後傾しましょう。その後、骨盤底筋群の右後部に手を添えて、前部の場合と同様に、骨盤底筋群を軽く締めて、頭に向かって引き上げましょう。次に、骨盤底筋群を緩めるという順番でエクササイズをすると、右後部への感覚が掴みやすくなります。

骨盤の前傾・後傾をすることで、伸縮の感覚が鈍かった骨盤底筋群の部位において、筋肉が伸縮する感覚が改善されてきましたか?改善してきたら、徐々に骨盤の傾斜を緩ませましょう。
骨盤の傾斜を緩めた位置で、骨盤底筋群を締めて頭に向かって引き上げ、その後骨盤底筋群を緩めるエクササイズをしましょう。
最終的には、骨盤のニュートラルポジション(骨盤の三角形が床に対して垂直な状態)で骨盤底筋の伸縮の感覚をマスターできることが理想です。


パターンB:
骨盤底筋群が緊張して、うまく伸縮できないタイプ

テスト①で骨盤底筋を指で軽く押した時に骨盤底筋群の各部分に「痛気持ちよさがある」、またテスト②で骨盤底筋がふわっと上に持ち上がる感覚が「ない」と答えた方がこのタイプです。
骨盤底筋群が過緊張していて、うまく伸縮できていない可能性が高いです。
このタイプの方は、まずは筋肉を緩ませることが大切です。

<改善エクササイズ>

過緊張筋肉を緩ませる方法は、2ステップあります。

ステップ1:筋肉のリリース
椅子に座る、もしくは横になりましょう。痛気持ちよさを感じる部位を、ご自身の手で優しく押し緊張している筋肉を外からリリースしてください。
軽く押さえている時に、ゆっくり静かに鼻から息を吸って、口から吐く呼吸を続けてください。

もし、手でうまくリリースできない場合は、テニスボールやスーパーボールを椅子の上にのせて、その上に過緊張な部分が当たるように体重の負荷を考えながらゆっくり椅子に座ります。座った状態で呼吸をします。
*急に全体重を乗せると痛く感じるので、徐々に体重をかけていきましょう。

ボールを使い椅子に座ってリリースする場合、骨盤底筋群前部が過緊張しているのであれば骨盤を前傾しましょう。リリースしやすくなります。

ボールを使って椅子に座ってリリースする場合、骨盤底筋群後部が過緊張しているのであれば骨盤を後傾しましょう。リリースしやすくなります。

ステップ2:呼吸を整える

ステップ1で外側から過緊張の筋肉をリリースした後、骨盤底筋群の伸長性収縮を深呼吸で促していきます。深呼吸をすることで副交感神経が刺激され、筋肉の緊張が和らぎリラックスすることを促進できます。
本来、横隔膜と骨盤底筋が連動した呼吸が理想ですが(詳細は「呼吸のテスト解説」)、もし骨盤底筋群が過緊張状態であれば、リラックスする感覚をマスターする必要があります。

まずは、骨盤底筋群の方に向かって息が降りていくイメージで、鼻からゆっくり長く息を吸ってください。感覚的にいうと、骨盤底筋群が軽く下がる感じがありますが、骨盤底筋を思いっきり下に向かって押し出すという感覚ではありません。 
この時、ステップ1でリリースした「過緊張」部位の筋肉を使っている感覚があれば、その部位をリラックスするように心がけてください。初めの頃は、この感覚が掴みにくいと感じることがあるかもしれませんが、続けることによって改善されます。少しずつ、骨盤底筋全体に均等に息が届くようなイメージをしながら、鼻からゆっくり息を吸ってください。

そして、骨盤底筋群のあたりから体の上の方へ押し出すようにゆっくり息を口から吐き出し、5秒ほど息を止めてください。こうすることで、過緊張の筋肉はリラックスされやすくなります。5回ほど繰り返しましょう。


パターンC:
骨盤底筋が緩んでいる可能性が高いタイプ

テスト①で骨盤底筋を指で軽く押した時に骨盤底筋群の各部分に「痛気持ちよさがない」、またテスト②で骨盤底筋がふわっと上に持ち上がる感覚が「ない」と答えた方がこのタイプです。
骨盤底筋群が緩んでいる可能性が高いです。

このタイプの方は、骨盤底筋群の伸縮の練習をすることが大切です。

<改善エクササイズ>

骨盤底筋群の伸縮練習をする方法は、2ステップあります。

ステップ1:伸縮

座位姿勢で両足をしっかり床につけましょう。この時、両方の坐骨が椅子に接し、骨盤の三角形が床に対して垂直になるように椅子に浅めに座ります。

まずは、骨盤底筋群全体が伸縮できるように、骨盤底筋群を軽く締めて頭に向かって引き上げてから、骨盤底筋群を緩めるという順番でエクササイズをする必要があります。特に軽く締めて引き上げることを意識する必要があります。

ステップ2:呼吸との連動

骨盤底筋群そのものの伸縮が意識できるようになったら、次のステップでは、横隔膜呼吸を促すために、呼吸を意識した骨盤底筋群の動きをマスターしていきましょう。

鼻からゆっくり長く息を吸い、骨盤底筋群が伸長性収縮することを意識しましょう。感覚的にいうと、骨盤底筋群が軽く下がる感じがありますが、骨盤底筋を思いっきり下に向かって押し出すという感覚ではありません。

息を吸い切ったら、骨盤底筋群全体を軽く締めて引き上げ、特に「緩い」と感じた部分を意識して、口を軽く開け、”はぁ〜”と言いながら息を吐きます。

セルフテスト呼吸編はこちらから

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