骨盤底筋群に関与する8つの要素
4-4.姿勢

ご自分の普段の生活での姿勢を思い浮かべてください。どのような姿勢で過ごしているでしょうか?
スマホを見る時、コンピュータを使う時、机に向かう時など、現代の生活では座ることが多くなり、体の使い方に偏りが出てきています。

あなたの姿勢は、「バランスの取れた姿勢」でしょうか?

理想の立位姿勢は、耳・肩・股関節・膝・外くるぶしを点で繋ぐと一直線になる姿勢です。

しかし、日頃から机に肘をついたり肩でカバンを持つような体の使い方や癖がある、怪我をしている、テニスやバドミントンなど片方の腕を使うスポーツをしている、バスケやサッカーなどジャンプやキックの際に利き足があるなどの場合、体に左右差が生まれてしまいます。また、怪我や痛みをかばうことによって体の使い方に変化が生じます。このように、姿勢はたくさんの影響を受け体の使い方のバランスが変わるため、骨盤底筋群の機能にも影響が出てきます。


猫背の場合

例えば、スマホやパソコンを使うことが多くなると、猫背になりやすくなります。

成人の頭の重さは、約平均5kgと言われています。この頭の重さを、下肢や骨盤、背骨などの骨や、骨を支える筋肉・靭帯によって支えています。しかし、下の図のように、目線が真っ直ぐの場合は約5kgの負担が首まわりの筋肉にかかるのに対し、目線が下りることで首の筋肉にかかる負担が更に増えていってしまい、首・肩まわりの筋肉が過緊張の状態になってしまいます。

猫背になってしまうと、首まわりにある筋肉が頭を支えるために過緊張状態になったり、頭への衝撃を減らすために本来はカーブ状になっている首の骨(頸椎)が平たくなり、ストレートネックという状態になってしまいます。

首まわりの筋肉は、鎖骨・胸椎・胸郭・肩甲骨にくっついています。それらの筋肉に過度なストレスがかかることで、首まわりの筋肉は過緊張状態になります。そのため、首まわりの筋肉がついている鎖骨・胸椎・胸郭・肩甲骨の動きが制限され、肩や背骨・肋骨の動きが低下します。それに伴い横隔膜の伸縮が制限されるため、横隔膜を活用した深呼吸を行うことが難しくなってしまいます。さらに、横隔膜と骨盤底筋群の連動もしにくくなります(1)

本来、体幹の筋肉がバランスよく前後左右に伸縮することで、脊柱や内臓をあるべき場所に安定させています。しかし、猫背の場合、腹部の上・中部が過緊張になるため、下腹部の筋肉が緩む状態になりやすいです。また、支えている内臓の位置が下がってしまい、骨盤底筋群に負担がかかってしまいます。この下がってきた骨盤内臓器を押し上げるために、骨盤底筋群も過緊張の状態になって適切な筋収縮がしにくくなってしまいます。また反対に、そのストレスに耐えきれないために、骨盤内にある臓器が骨盤底筋より下に下がってしまう骨盤臓器脱のような機能不全を起こしてしまいます。


骨盤の位置を確認してみましょう。

指をおへそから下に向かって進ませると硬い部分にあたり、それが恥骨結合になります。そして、両腰骨にあたるところが、上前腸骨棘です。
この3点を結んだものを、「骨盤の三角形」とします。

立った時・座った時に、左右の上前腸骨棘と恥骨結合をつなげた「骨盤の三角形」を横から見て(下の図の赤点線)床に対して垂直になっていますか(骨盤ニュートラル)?
それとも、上前腸骨棘が恥骨結合と比べて後ろに出ていますか(骨盤後傾:お尻の穴が真下・やや前を向いている)?
それとも、上前腸骨棘が恥骨結合と比べて前に出ていますか(骨盤前傾:お尻の穴が後ろに向いている)?

骨盤底筋群の機能だけではなく、体全体がバランスよく機能するためにも、立つ時は、極力理想的な姿勢になるように(横から見て耳・肩・股関節・くるぶしが一直線上になるように)、骨盤もニュートラルな位置でいるように意識しましょう。
また、スマホ・コンピューターを使用する時も、この姿勢を意識するよう心がけていきましょう。

参考文献

  1. Corrêa, E.C.; Bérzin, F. Temporomandibular disorder and dysfunctional breathing. Braz. J. Oral. Sci. 2004, 3, 498–502
  2. Mattox TF, Lucente V, McIntyre P, Miklos JR, Tomezsko J. Abnormal spinal curvature and its relationship to pelvic organ prolapse. Am J Obstet Gynecol. 2000;183(6):1381-1384. doi:10.1067/mob.2000.111489

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