
骨盤底筋群は、股関節の筋肉からも大きな影響を受けています。特に、股関節*の深層外旋筋と呼ばれる筋肉の一つである内閉鎖筋は、股関節と骨盤を繋ぐ大切な役割があります。
*股関節は、太ももの骨(大腿骨)が骨盤の中のくぼみ(ソケット)に収まっている関節です。

内閉鎖筋は骨盤の奥から始まり、大腿骨の頭につながっています。この筋肉の役割は、①股関節を外旋することと、②骨盤壁の一部を担い骨盤臓器を支えることです。また、内閉鎖筋は、骨盤底筋の最大の筋肉となる肛門挙筋(右のイラスト腸骨尾骨筋と恥骨尾骨筋)と閉鎖筋膜を共有している。そのため、内閉鎖筋の動きが閉鎖筋膜を介して、肛門挙筋にも影響を与え、肛門挙筋が働きやすくするための基盤を作り、骨盤臓器を支えると考えられています(1)。このように、内閉鎖筋が骨盤底筋群の一部である肛門挙筋が影響を及ぼすため、内閉鎖筋のリハビリテーションを行うことで骨盤底筋群の収縮力が改善することもわかっています(2)。

骨盤底筋群と内閉鎖筋・梨状筋を横から見た図

4-5.臀筋でお尻の筋肉の働きによって骨盤の位置が変わることをお話ししましたが、骨盤の位置が変わることは股関節の位置が変わることにつながります。
例えば、骨盤の位置が前傾する(骨盤が前に倒れ、腰も反りやすくなる)と、股関節の中の大腿骨が内旋(内股になる)してしまいます。この状態になると、大腿骨の外側に付着している股関節の外旋筋(本来は内股にならないように足をまっすぐ、もしくは外方向に回し動かす作用がある)が常に伸ばされた状態に陥り、筋肉が緊張します。骨盤底筋に大きな影響を与える内閉鎖筋(外旋筋の一部)も緊張状態にあるため、骨盤底筋群も過緊張し機能低下を及ぼすことにつながります。

股関節の痛みは、さまざまな原因が考えられており、骨の軟骨がすり減る変形性股関節症や股関節唇損傷、大腿骨頭と骨盤の位置関係が原因で起こる股関節インピンジメント、腱の炎症、そして骨盤底筋群の問題もその一例です。股関節の痛みを和らげようとして体重のかけ方を変えたり、歩き方を変えるなどによって下肢のメカニクスが変わり、骨盤底筋群の機能にも影響を与えます。

参考文献
- Muro S, Nimura A, Ibara T, Chikazawa K, Nakazawa M, Akita K. Anatomical basis for contribution of hip joint motion by the obturator internus to defaecation/urinary functions by the levator ani via the obturator fascia. J Anat. 2023;242(4):657-665. doi:10.1111/joa.13810
- Tuttle LJ, Delozier ER, Harter KA, et al. The role of the obturator internus muscle in pelvic floor function. J Womens Health Phys Ther. 2016;40:15–19. doi: 10.1097/JWH.0000000000000043.
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