
お尻の筋肉は、大きく分けて大臀筋・中臀筋・小臀筋に分かれます。

大臀筋:主に股関節の伸展(太ももを後ろに引く動作)を担う臀筋群の中で一番大きな筋肉です。特に骨盤をニュートラル(骨盤の三角形が立位で床に対して垂直になる)にし、背骨を自然なS字カーブ(胸椎は後弯(後方へのカーブ)、腰椎は前弯(前方へのカーブ))に維持する大きな役割があります。
中臀筋:主に股関節の外転(太ももを体の中心から外に向かって開く動作)を担い、歩行中の体重移動が片足になる時に骨盤の位置を安定させます。
小臀筋:小臀筋も中臀筋と同じく股関節の外転(太ももを体の中心から外に向かって開く動作)を主に担いますが、中臀筋の補助的な役割をしています。また、動作中に股関節の関節包(関節を包んでいる袋状の組織)が関節内で挟まったり擦れたりすることを防ぐ役割があります。
中臀筋と小臀筋がうまく働かないと、以下のようなことが起こります。
例えば右脚の中臀筋・小臀筋がうまく機能しない場合、歩行時に右脚だけで体重を支えている際は、骨盤の左側が下がってしまいます。また、右脚だけで片脚立ちをする時に中・小臀筋がうまく伸縮せず、骨盤が左側に傾いてしまいます。さらに、骨盤が左右に傾くだけではなく、筋肉のバランスが変わることで、股関節の安定に寄与する深層外旋筋の機能にも影響を与えていきます(4-6. 股関節参照)。
臀筋と骨盤底筋群の関わり
お尻の筋肉は、座る・立つ・歩く・走る・ジャンプなど、スポーツをする際も重要な上に、歩行や走行時に大腿骨の動きを調整する重要な役割をします。さらに、骨盤をニュートラルの位置に保ち、腰椎の前弯(前方へのカーブ)を維持します。そのため、大臀筋の機能が低下した場合、自然な腰椎の前弯も失われ、骨盤が後傾し、骨盤底筋群にストレスをかけることがあります(4-4. 姿勢:骨盤が後傾している場合参照)。
普段の姿勢、特に座っている時に背中や腰が丸まった悪い姿勢を続けてしまうと(下のイラスト参照)、腰椎の前弯が失われてしまい骨盤が後傾します。そして、骨盤内の臓器をサポートするために骨盤底筋へのストレスが増加し、骨盤臓器脱の危険因子となります(1)。

大臀筋がうまく活用できないと、歩行中に大臀筋による蹴り出す力が低下します。その代わり(代償)に、ハムストリング(太もも裏の筋肉)とふくらはぎの筋肉を過剰に使います。下のイラストの悪い姿勢のように、骨盤や腰椎の位置が変わるので、股関節の骨盤と大腿骨の位置関係や動き方が変わってしまい、股関節の可動域が制限されます。

これによって、股関節唇に負担がかかってしまったり、股関節内での軟骨損傷が発生します。

現代の座りがちな生活は、お尻の筋肉の活用を減少させしまいます。また、猫背のような姿勢もお尻の筋肉をうまく使えなくさせます。このように、普段の姿勢によって知らず知らずのうちに、臀筋群の機能を低下させている可能性があります。骨盤底筋群の機能を活性化する為にも、臀筋群の機能のバランスを見落とさないようにしてトレーニングをしていく必要があります。
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参考文献
- Mattox TF, Lucente V, McIntyre P, Miklos JR, Tomezsko J. Abnormal spinal curvature and its relationship to pelvic organ prolapse. Am J Obstet Gynecol. 2000;183(6):1381-1384. doi:10.1067/mob.2000.111489
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