骨盤底筋群に関与する8つの要素
4−2.呼吸法

この記事では、呼吸と骨盤底筋群との関係について解説します。
まず、呼吸の仕組みについて理解していきましょう。
鼻や口から吸い込まれた空気は気管を通って肺に送られますが、肺には筋肉がないので自らふくらんだりしぼんだりすることはできません。私たちが呼吸する時は、肋骨の間にある筋肉(肋間筋)や、横隔膜という筋肉の働きによって空気の出し入れが行われています。


呼吸時の肺と横隔膜の動き

より効率的な呼吸をして酸素・二酸化炭素の入れ替えをするためには、横隔膜と肋骨の間にある筋肉が適切に機能することが必要となります。


横隔膜と体幹の関係

横隔膜は体幹の一部と認識されています。
体幹は、体の中心(幹となる)部分で、頭と四肢を支える重要な領域です。体幹には様々な筋肉や構造が含まれており、体の安定性やバランス、動作の調整に重要な役割を果たしています。

主な体幹の構成要素には、以下のような部位や筋肉が含まれます。

腹横筋: 腹部の側面に位置します。深層の腹筋として知られています。
多裂筋: 背骨に沿って走る多裂状の筋肉で、脊柱の安定性を保ちます。体幹の後部を形成します。
骨盤底筋群: 骨盤底部に位置し、尿道、膣、肛門周辺をサポートします。体幹の下部を形成します。
横隔膜: 胸腔と腹腔を仕切る膜で、呼吸においても重要な役割を果たします。横隔膜の収縮と弛緩によって呼吸が調節され、体幹の上部を形成します。

これらの筋肉群が立体的に上方,側方,下方からコルセットのように体幹に安定性をもたらしています。


呼吸における横隔膜・骨盤底筋群・腹横筋の連動

体幹を形成している横隔膜は、骨盤底筋群や腹横筋との共同作業を通して、効率的な圧力の伝達と呼吸の「ポンプ作用」を生み出しています(1)

このように、胸とお腹はシンクロしながら呼吸動作を繰り返しています。


通常、この圧力の伝達と呼吸の「ポンプ作用」は、横隔膜や骨盤底筋群のバランスが良好な場合、順調に機能しますが、疾患や病気、過度な身体的・精神的なストレスなどによって、このバランスが崩れることがあります。
骨盤底筋群の不調があるから横隔膜が機能していないのか?それとも、横隔膜が機能していないから骨盤底筋群の不調があるのか?
それを判断することは難しく、人によって異なります。

しかし、横隔膜の機能を改善すれば骨盤底筋群の不調も改善され、また、骨盤底筋群の不調を改善すれば横隔膜の機能も改善されるということが考えらえます。
横隔膜がうまく使われていない理由としては、姿勢が猫背になってしまっているなどの影響で、胸椎の動きが制限されていたり、肋骨と肋骨の間にある筋肉がうまく伸縮できないために胸郭の動きが制限されている可能性があります。

立命館大学が行った安静時のアスリートの呼吸パターンに関する研究(2)で、約90%のアスリートが、横隔膜を使った呼吸をしていないことがわかっています。横隔膜を活用した呼吸は、骨盤底筋群の連動を改善し骨盤底筋機能の向上を図るだけでなく、特にアスリートにとっては、持久力や回復を助けることに繋がるという点でもとても重要です。
自分が普段どのような呼吸をしているか確認してみましょう。

参考文献

  1. Park H, Han D. The effect of the correlation between the contraction of the pelvic floor muscles and diaphragmatic motion during breathing. J Phys Ther Sci. 2015;27(7):2113-2115. doi:10.1589/jpts.27.2113
  2. Shimozawa Y, Kurihara T, Kusagawa Y, et al. Point Prevalence of the Biomechanical Dimension of Dysfunctional Breathing Patterns Among Competitive Athletes. J Strength Cond Res. 2023;37(2):270-276. doi:10.1519/JSC.0000000000004253

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